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偽りの秘書 9 [その他 2次創作]

ようやく・・・というか、「偽り」の9話になります。

一気に完結までしたかったのですが、長くなったので区切りのいいところで掲載します。




絳攸は女体化です。

現代高校生双花とは関係ありません。

大丈夫な方のみ、続きからどうぞ
















偽りの秘書 9

二日酔いなんていつ以来だろう。完全に遅刻だ。
楸瑛は副社長になってからこんな無責任なことはしたことがなかった。
ずきずきする頭を抱えながら楸瑛はオフィスのドアを開けた。
「副社長、どうしたんですか?風邪でも?」
韓升が心配そうに駆け寄ってくる。
「絳攸もまだ来ていないんですよ。今まで遅刻したことないのに」
絳攸の名前が出て、楸瑛はカッとなった。
「絳攸はもうこない。人事部に連絡して退職金を支払うようにしてくれ」
「え?なぜですか」
韓升の疑問に答えないで楸瑛はコーヒーを持ってくるように言うと、オフィスの机に向かった。

「いったいどうしたんですか。喧嘩でも?」
コーヒーを置く韓升を見ながら、そうだ、退職金ではなく被害を調べるほうが先決だ。
調査チームを組織して、それから・・。
楸瑛が痛む頭でどうにか指示することを考えていると、ドアが開いて螢が入ってきた。
「あら?絳攸は?」
甲高い声に楸瑛はイライラした。なんでまたこんなときに螢が現れるのか。
「絳攸は首にした」
「どうして?」
「もう少しでこの記事が載るところだったんだぞ」
歯を食いしばるように楸瑛が言って、出版社に圧力をかけてもみ消した記事のコピーを二人に見せた。
「彼女は紅家のスパイだったんだ」
「まさか」
楸瑛だって信じたくなかった。でも紅黎深の秘書の楊修と連絡を取り合っているのは確かだ。
それに。
「絳攸は紅黎深の愛人だ」
また頭に血が上った。絳攸が紅黎深に抱かれながら自分のことを笑っていたのかと思うと
怒りで体が震える。
どうやって復讐しようかと考えているとあっさりと韓升が異議を唱えた。
「絳攸は愛人じゃありませんよ」

*

「なんだって?」
「ですから、李絳攸は紅黎深の愛人ではありません」
断言する秘書に楸瑛が眉をひそめた。
「絳攸が雪那社長の紹介であなたの秘書になったことをお忘れですか?」
忘れていた。そうだ、絳攸は兄達が勝手に採用して自分の秘書にしたのだ。
あの兄達がおかしな人間をよこすはずがない。しかし、兄達も騙されていたとしたら?
「絳攸の経歴は調べることが出来なかったはずだ」
「調べましたよ。雪那社長にも了承を頂きました。私があなたの秘書になる人間をチェックしないと思っていたのですか?」
優秀な秘書に当り前のように言われて、楸瑛は黙るしかなかった。
「絳攸は以前、紅黎深の秘書だったんです」
「年が合わないだろう?絳攸は私より2つ下だ」
大学か秘書学校を出てすぐにこの会社にきたはずだ。
「彼女は16歳で大学を卒業しています。」
ポカンと口をあけた楸瑛に韓升が続けた。
「あなたと同じ貴陽大学ですよ。と言っても、あなたが大学に入った年には絳攸は卒業しています。だから会った事がなかったのでしょう」
16歳に卒業したのが本当ならば6年もあの紅黎深の秘書をしていたことになる。
仕事に慣れていると思ったのは勘違いではなかったのだ。
「6年も秘書をしていたら愛人になっててもおかしくないじゃないか」
「内密にされていますが、絳攸は紅黎深の養女でした」
「姓が・・」
「そうです。理由はわかりませんが紅姓ではありません。でも養女です」
それまで黙っていた螢が口を挟んだ。
「やっぱり紅家のお嬢様だったのね。この前、買い物に付き合ってもらったとき絳攸はどの店に入っても気後れしなかったのよ。VIPルームで買い物しても当り前のようにしていたわ。それにマナーも申し分ないし。気がついていた?地味に見えるあの服だって素晴らしい仕立てなのよ。靴は手縫いだし」
螢らしい観察のしかただった。もしかしたら絳攸がどんな女性か玉華義姉と調べにきたのかもしれない。
「紅黎深の娘で元秘書だなんて、なおさらスパイとしか思えない」
愛人ではなかったとわかって安堵しているのを隠して楸瑛は言った。
「絳攸が秘書になって2年、リークされたことは一度もありませんよ」
確かに楸瑛たちが進めていた取引がおかしくなったことはない。
「じゃあ、絳攸はどうしてここに・・・?」
「それは雪那社長に聞いてみた方がいいでしょうね。でも絳攸が会社を裏切ったことはないと思いますよ」
愛人でもスパイでもなかったのか?

「兄様、気付かなかったの?絳攸のドレスはいつも赤色だったのよ」
螢の指摘で楸瑛は絳攸が最初から紅家に関わりがあると伝えていたとわかる。
絳攸自身に気を取られて気付かなかったのは自分だったのだ。
言い分も聞かずに秘書を辞めさせて、顔を見たくないとまで言ってしまった。
掴まれた腕を振り払ったときの絳攸の顔を思い出す。
散々好きだと口で言いながら、肝心なときに信じてあげなかった自分の愚かさに今は後悔しかなかった。
謝りたかった。許してくれないかもしれない。会ってさえくれないかも。
「せっかく今日は絳攸が選んだドレスを一緒に取りに行ってランチも一緒にするはずだったのに」
「私が行く」
妹の言葉に楸瑛が飛びついた。


ドレスの入った箱を持って絳攸のマンションに向かった楸瑛は警備員に止められた。
「絳攸に会いに来た。伝えて欲しい」
「李絳攸さんはいません」
「帰宅するまで待たせてもらう」
警備員は言いにくそうに楸瑛に告げた。
「もうここには住んでいないんです」

信じようとしない楸瑛に警備員も困り果てて、合鍵を使って部屋に連れて行った。
ドアを開けると、そこには何もない空間が広がっていた。
「そんな・・・」
絳攸に会ったのは昨日の夜のことなのに。
ガランとした部屋には何一つ残されていなかった。


9話終了



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