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拍手文 2010/12 [過去拍手文]

12月の拍手文です。

12月と言えば、クリスマス・・・なんでしょうけれど、
私が餅好きなので、餅つきです。





餅つき



ぺったん、ぺったんと餅をつく音が朝廷に響いていた。
もち米を蒸す湯気が立ち上り、杵を持つ者、つきあがった餅を丸める者で賑やかだ。
今日は仕事納めの餅つき大会が行われている。

「お前は羽林軍だろう」
臼の前で絳攸は冷たく言った。言われたのは左羽林軍将軍の藍楸瑛。
「武官はあっちだ」
絳攸が顎で示した先には、餅つき大会に便乗した左右羽林軍の対抗戦が行われている。
石で作られた臼が割れそうな勢いの男の闘いだ。

あれで食べられる餅が出来るのだろうかと心配するほどだったが、
家事万端に精通している静蘭が厳しく点検しているので、見事な餅が恐ろしい早さで出来上っている。

武官が大騒ぎしている横で文官達がのんびりと餅をついていた。
こちらは競争ではないので穏やかなものだ。
特に戸部は返し手が景侍郎なので、ほわわんとした雰囲気を醸し出していた。

「いいじゃねえか、一緒に餅ついてやれよ」
酒を飲みながら杵を持つ工部の管尚書が声をかけてきた。欧陽侍郎が餅が酒臭くなると怒鳴っているが、酒臭くなるよりそのジャラジャラしたのが餅に混ざるんじゃないかと周りに心配されていることには本人は気付いていない。
「どうせ黎深は来ねえんだろ?」
ビシッと絳攸のこめかみに青筋が浮かびあがる。尚書と侍郎で一臼つく事になっているのに、あの我儘大王はとんずらこいているのだ。

「よ、余は絳攸達がついた餅が食べたいのだ」
主上にまで気を使わせてしまった。絳攸はため息をつくと侍官に蒸したもち米を持って来るように頼み返し手の準備を始めた。
杵を持つ楸瑛はにこにこと嬉しそうだ。たかが餅つきで何がそんなにうれしいんだか。
怪訝に思う絳攸に、楸瑛が嬉し恥ずかしといった声で話かけた。

「絳攸、はじめての共同作業だね」(ポッ←頬を染める音)

「気持ち悪いことを言うなあああああ~!」
楸瑛は蒸したてのもち米を絳攸にぶつけられたのだった。






まだ餅つき




大事な食べ物を台無しにしてしまうなんてと絳攸は反省していた。
たとえ常春大馬鹿野郎に腹が立ったとしても、食べ物には罪はない。

「代われ、俺がつく」
楸瑛から杵を奪いとると、侍官にもう一度もち米を臼に入れてもらって餅をつきだした。
最初はもち米をつぶしていく。臼の周りをまわりながら体重をかけて杵で丁寧につぶして、米粒がだいたいつぶれてきたら、杵の重さで落とすようについていくのだ。

ぺったん、ぺったんと餅をついていく。
「絳攸、慣れたもんだね」
こういう力仕事は慣れていないだろうと思っていた楸瑛が驚くような上手さだ。
「毎年ついているからな」
「紅家では餅つきするのかい?」
「ああ、黎深様がお汁粉がお好きだからな」
紅家の正月はお雑煮ではなく、お汁粉だ。正月だけではなく、頻繁に朝ご飯にも登場する。
紅家本家も卲可様のところも正月はお雑煮らしいから黎深様がお好きなのだと思う。
・・・そのわりには美味しそうには食べていないけれど。

「愛されてるねぇ・・絳攸」
「杵で頭をかち割ってやろうか?」
一般の家庭で行われる餅つきを養い子に体験させていることに絳攸は気付いていない。
貴族では餅は使用人が用意するのだから。

つき手と返し手が声を掛けながらつくと調子が合ってやりやすいのだが、絳攸と楸瑛は無言だ。それでもすんなりとついていくのだから、やはりこの二人は相性がいいのだろう。
しばらくすると滑らかな餅がつきあがった。

楸瑛は出来たての温かい餅に手を添えて愛しそうにつぶやいた。
「絳攸の・・・おしりみたいに柔らかいね」
「本当に頭をかち割られたいらしいな」
絳攸は暗い笑みを浮かべながら杵を振り上げた。


拍手、ありがとうございます!


絳攸は楸瑛を追いかけまわすのに一生懸命で、餅を丸めている官吏の皆さんが手に持った
餅で『李侍郎って・・・・こんなに柔らかいんだ』と想像されていることには気付かないと思います。思わぬところで癒し(?)を提供した絳攸です。








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