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強いられた結婚 1 [HQ 双花]

久しぶりに、本当に久しぶりに・・・!!!
来てくださっている方はみえるのでしょうか

10歳違い双花で現代設定です。
絳攸は女体化です。
大丈夫な方のみ 続きからどうぞ











強いられた結婚 1 


「君が李絳攸?」

声をかけられて読んでいた本から顔を上げると、長身で黒髪のすばらしくハンサムな男性が立っていた。
「そうですが」
養父に呼び出されて訪れたホテルのカフェだから、会社の人なのだろうか。
今まで秘書の楊修にしか会った事はなかったけれど、養父は紅財閥でも要職にある。
訝しげな返事に男性は眉を少し上げた。何か失礼なことを言っただろうか。
まだ一言しか喋っていないけれど。
「私は藍楸瑛」
今度はこっちが驚く番だった。藍?あの紅家とライバル関係にある藍財閥?
男性をもう一度見て、藍家の人間であることは間違いないと思った。彼の持つ雰囲気は養父と同じように人の上に立つ人間のものだ。
すっと目の前に手が差し出された。
「はじめまして」
「こちらこそ」
握手をするとギュッと握り返されて驚く。
そして、もっと驚くことを楸瑛と名乗った男性が言った。
「よろしく、婚約者どの」


「は?今、何て?」
婚約者と聞こえたけれど、そんなのは聞き間違いに決まっている。
私はまだ高校も卒業していない。年が明けたらようやく18歳になるのだから。
「聞いていないの?今日、君と私は婚約したんだよ?」
・・・・聞いていない。
唖然とする私を見て、婚約者だと名乗った男性は頷いた。
「どうりで。目出度い席に制服なのは変だと思ったよ。そういう私もこの話は最近知ったのだけどね」
婚約者は笑顔でそう言ったけれど、笑っていないのは目を見てわかった。
きっと私と婚約することになって不満なのだ。婚約が事実なら、の話だけれど。
「冗談ですよね?」
紅家と藍家の縁談があるなど信じられない。彩雲国で二大勢力を持つ貴族であり、財閥の両家は反発することはあっても、結びつくことはないからだ。
もしかしたら・・・思いつくことがあって胸が塞いだ。

社長が叔父に変わって、世間は一人娘の秀麗に注目していた。
秀麗は紅家の正統なお嬢様だったけれど、叔父が大学の教授をしていて紅財閥と係わりを持たなかったから、表に出なかったのだ。
考えたくなかったけれど、前社長の養女の私はもう紅家では邪魔者なのかもしれない。
・・・・邪魔者もなにも、もともと紅姓でもないけれど。
心の中に常にあるその傷がうずく。

養父母の力になりたいとずっと勉強に励んできた。
念願の貴陽大学に推薦で合格できたから、今日はそのお祝いだと言われていたのに。
「君は何も聞いてないの?」
責める口調が混じった言葉に婚約したことは本当だとわかる。
そして、「冗談だったらよかったのにね」というため息まじりの小さな呟きを聞きとって、望まれた婚約ではないこともわかった。


向かい合って座っていても特に会話もなく、結婚するのなら大学進学は諦めなくてはならないのだろうかとぼんやり考えていると名前を呼ばれて我に返った。
養父が不機嫌そうに立っていた。
「何度呼べば聞こえるんだ、絳攸」
「す、すみません」
慌てて立ち上げる絳攸に背を向けて養父が歩き始めるから、鞄を掴んで後を追った。
今日の養父は機嫌が悪いらしい。楸瑛と名乗った男性もついてきた。
着いた先はホテルのレストランの個室で、入ると知った顔が三人いた。

「「「やあ、会えてうれしいよ」」」
同じ顔の三人の男性が笑顔でそう言った。

*

「卲可先生がどこにいるか知っている?」
声をかけられたのは、貴陽大学の構内でのことだ。
絳攸はまだ高校生だけれど、大学の聴講生として週に数回大学に足を運んでいた。
養父と同年代らしい男性三人にそう聞かれて困ってしまった。
たぶん、卲可叔父は図書館の書庫にいる。
本が大好きな叔父は、時間ができると苦い薬草茶を持って図書館に出かけるのだ。
「きっと・・・図書館の書庫にみえると思います」
自分はここの学生ではないけれど、相手はどう見ても外部の人達だから案内したほうがいいに違いない。
そう思いながらも、案内しますと言い出せなかった。
図書館までたどりつける自信がない。
この、週に何度も来る場所でさえ地図と目印を確認しながら、そして途中で学生に聞いているのだ。
絳攸は地図を差し出すことにした。
「図書館はここですが・・・・私はご案内できません」
「忙しかった?ごめんね」
尊大ともいえる表情が変わって謝られてしまうと、申し訳なくて素直に自分の迷子体質を告げた。

結局、そのあと時間があるか聞かれた絳攸は、聴講が終わったから帰るだけだと言ってしまい、図書館に連れて行かれ、大学近くのカフェでパフェを奢ってもらったのだった。
それが初夏のこと。
それから何度か大学で出会う機会があり、その度にケーキやパフェを御馳走になって、お茶のみ友達のようになっていた。

最初から紅黎深の養女だと知っていて声をかけたのだろうか。
きっとそうだろう。藍財閥を総べている三人が知らないわけがない。
自分だって彼らが誰か分っていたのだから。
だからあえて紅家に係わる話はしたことがなかったし、藍財閥に探りを入れるような話題も出さなかった。
普通の女子高生がするような他愛もない会話しかしていないはずだ。
それは相手も同じで、笑い合いながら巧妙に本音は隠されていたように思う。
何が目的だろう。そして養父が婚約させた意味は。
にこやかな三人の藍雪那と苦虫を噛んだような顔の養父。
男性陣そっちのけで仲良く喋っている雪那の妻と養母。
婚約を心から喜んでいないとわかる婚約者。
一気に変わってしまった身の上の心配をしながら絳攸は無表情を保っていた。



1話終了
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