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拍手文 2010/9 [過去拍手文]

遅くなってすみません。

9月の拍手文です。




1

二百十日

ビュウービュウーと強い風が吹き荒れている。
ザザッザザッと時折強くなる雨音が普通の雨と違うことを示していた。

「まさか、本当に来るとはな」
今日は立春から数えて二百十日目。台風襲来の特異日といわれている。
仙洞省からの通達をうけて、ほとんどの官吏は帰っていた。
残っているのは、仕事が終らない吏部と、各部の宿直、そして警備に当たる武官だった。

もともと少し高い所に建てられているので、洪水の心配は無い。
残った人々は外朝の真ん中にある一室に避難していた。
数本のろうそくを灯した室内は薄暗く、閉め切った部屋は蒸し暑い。

「とにかく、台風が過ぎるまでは何もできません。さっさと寝ることにしましょう」
楊修がそう言うと、周りにいた官吏たちも同意して雑魚寝を始めた。
ビュー、ザザッという大きな風と雨の音よりも、蒸し暑さよりも日頃の仕事の疲れの方が勝ったのだろう、次第に寝息が聞こえ出した。


ガタガタッと風で雨戸が震えた瞬間、ろうそくの火が消えてしまった。
真っ暗闇になった室内にまだ起きていた人たちの声。
「ろうそく、どうする」
「寝るだけだから、いいんじゃね」
「・・・・・・あっ」
「厠行くときに、人踏んだら困りますよ」
「それもそうか」
「・・・や、・・・あ」
「・・・?」
「ば、・・こんなとこで・・・・」
「???」
「だれか!灯りを点けなさい!」
楊修の絶叫に慌てて武官がろうそくに火を灯すと、李侍郎に乗っかって不埒なことをしている将軍がいた。
「こんの、常春があ~~~~!」
胸元を乱して真っ赤に顔を染めた絳攸が楸瑛を殴り、楸瑛は暴風雨の中に追い出されたのだった。



拍手、ありがとうございます!
二百十日(にひゃくとおか)は雑節のひとつで、台風襲来の特異日として農家の三大厄日とされているそうです。今年は9月1日です。




2

二百二十日

二百二十日の今日も台風が近づいていた。
「今日の方が大きいみたいですね」
珀明が仙洞省からの台風襲来の情報を吏部に伝える。
十日前の事もあるので、吏部官吏は必死で仕事をした。衆人環視の中で大切な吏部侍郎が
男に襲われるなどあってはならないことだ。
それでも仕事は終らなくて、結局同じように吏部官吏と宿直と武官が避難所にしている部屋に集められた。
支給された夕食を取りながら対策会議が行われる。
「なんで帰らなかったんですか」
「お前達が頑張ってるのに、帰れるか!」
その気持ちはありがたいけれど、少しは自覚してもらいたい。
全吏部官吏はそう思ったが、いまさらである。

「問題は寝たときです」
「灯りなど、どうでもできますからな」
「李侍郎を我らで囲んで寝るというのはどうですか?」
「大将軍に頼んでこちらの警護から外してもらったのだし、今日はそこまで心配しなくても」
「甘いですね。どこからでも湧いてでるボウフラと珠翠殿もおっしゃっています。用心に越したことはありません」
まるで災害みたいな言われかたである。

何事もなく時間は過ぎて行き、寝ることになった。
「絳攸、こちらに来なさい」
楊修が手招きをするので絳攸が近づくと胡坐をかいた膝の中に座らされた。
「・・・・恥ずかしいのですが」
「黙りなさい、さ、碧官吏前に」
「失礼します」
珀明が恥ずかしそうに絳攸に抱きついた。
「これで前も後ろも大丈夫です。安心して寝なさい」

眠れるか~~~!

どう見ても3(自重しました)にしか見えない状況に、その室にいる全員が突っ込みをいれたのだった。

拍手ありがとうございました!
楸瑛は翌日の朝、睡眠不足と暑さでふらふらしていた絳攸をお持ち帰りしたと思います。



二百二十日(にひゃくはつか)
二百十日とともに天候が悪くなると恐れられて来たそうです。
統計的には二百二十日の方が台風が襲来することが多いそうです。
今年は9月11日です。



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